「また、主が約束なさった幸いをすべて成就し、あなたをイスラエルの指導者としてお立てになるとき、 いわれもなく血を流したり、御自分の手で復讐なさったことなどが、つまずきや、お心の責めとなりませんように。
主があなたをお恵みになるときには、はしためを思い出してください。」
ダビデはアビガイルに答えた。
「イスラエルの神、主はたたえられよ。主は、今日、あなたをわたしに遣わされた。
あなたの判断はたたえられ、あなたもたたえられよ。
わたしが流血の罪を犯し、自分の手で復讐することを止めてくれた。」
サムエル記上 25:30-33
「人を裁くな。あなたがたも裁かれないようにするためである。
あなたがたは、自分の裁く裁きで裁かれ、自分の量る秤で量り与えられる。
あなたは、兄弟の目にあるおが屑は見えるのに、なぜ自分の目の中の丸太に気づかないのか。」
マタイによる福音書 7:1-3
前章、本章、そして次章と、裁き、復讐、敵とわたしに関するエピソードの並行箇所が続く。
前章と次章ではダビデとサウル王、本章ではダビデとカレブ人ナバルである。
手勢を従え、それなりの武装集団であるユダ族のダビデ一党は、ある時期に本拠地であるユダの地にある街、カルメル*1に滞在していた。
そこで働くカレブ人ナバルには雇い人の羊飼いたちを「防壁の役をして」*2危険から守ってくれたダビデ一党に義理があった。
ダビデはその義理を返してもらおうと、カレブ人ナバルに対し使者を送り、丁寧に口上を述べさせ用心棒代を請求するがナバルはそれに対して侮辱で応じる。
面目を潰されたダビデは一党を率いてカレブ人ナバルとその一家を皆殺しにしようと出陣する。
そこで、面目を潰され自らの手で侮辱に対する復讐を果たそうとするダビデと、*3それを諌めようとするカレブ人ナバルの妻、アビガイルとの対話が始まる。
その対話の中でカレブ人ナバルの妻、アビガイルはダビデに贈り物を届け自らの手で復讐をしようとするダビデを説得し、それを思いとどまらせる。
ダビデを侮辱したカレブ人ナバルは主の裁きにより死に至る。*4
前章、本章、次章と連続して語られた
敵とわたしの間、裁く神と許す神、復讐に関する三つのエピソードは、サムエル記上のラスト、サウル王の死に向かい統合されていく。