サウルはペリシテの陣営を見て恐れ、その心はひどくおののいた。
サウルは主に託宣を求めたが、主は夢によっても、ウリムによっても、預言者によってもお答えにならなかった。
サムエル記上 28:5-6
これを聞いたピラトは、この人はガリラヤ人かと尋ね、 ヘロデの支配下にあることを知ると、イエスをヘロデのもとに送った。
ヘロデも当時、エルサレムに滞在していたのである。
彼はイエスを見ると、非常に喜んだ。というのは、イエスのうわさを聞いて、ずっと以前から会いたいと思っていたし、イエスが何かしるしを行うのを見たいと望んでいたからである。
それで、いろいろと尋問したが、イエスは何もお答えにならなかった。
ルカによる福音書 23:6-9
本章でサムエル記上における主要人物二人、サウル王とダビデは二人とも罪の只中にある。
ダビデは自らの命を救おうとイスラエルの敵であるペリシテ王アキシュの家臣となり、それだけではなく、イスラエルとの戦いに参加するとまで宣言する。
場面は変わり、もう一方の登場人物であるサウル王へと焦点が移る。
サウル王はペリシテ軍と対峙している。
イスラエル全軍を率いているサウルだが、敵であるペリシテ軍は非常に強く見え、彼の心は酷くおののく。
サウルは怯え、祈るが神の答えは沈黙である。
預言者も、大祭司が託宣に用いるウリルも、そして夢も神の言葉をサウルに伝えない。*1
サウルは祈るが、それは神に立ち返らない祈り、神ではなく神の力を自分のために使おうとする祈りではないか。
丁度、ペリシテ軍に手酷い敗戦をしたイスラエルの長老たちが、契約の櫃さえ陣中にあれば、神の力によって敵に勝てると誤ったように。*2
サウル王は神の沈黙に耐え切れず、霊媒師に頼る。
神に立ち返らず、まじないに縋る。*3
神は見せ物として奇跡を起こすわけではないし、取り引きとして願いを聞き入れるわけでもない。
本章においてサウル王に主は沈黙したままである。
丁度、キリストがヘロデ王に対して沈黙したままであったように。
*1:主よ、苦難に襲われると 人々はあなたを求めます。
あなたの懲らしめが彼らに臨むと 彼らはまじないを唱えます。
イザヤ書 26:16
*2:兵士たちが陣営に戻ると、イスラエルの長老たちは言った。
「なぜ主は今日、我々がペリシテ軍によって打ち負かされるままにされたのか。
主の契約の箱をシロから我々のもとに運んで来よう。そうすれば、主が我々のただ中に来て、敵の手から救ってくださるだろう。」
サムエル記上 4:3
*3:主の手が短くて救えないのではない。
主の耳が鈍くて聞こえないのでもない。
むしろお前たちの悪が 神とお前たちとの間を隔て
お前たちの罪が神の御顔を隠させ
お前たちに耳を傾けられるのを妨げているのだ。
イザヤ書 59:1-2